合格への道標

偏差値では全く分からない中学入試(1) 巣鴨編

巣鴨中学(Ⅱ期)の入試より・算数

1.数の列ア~ウは、それぞれある規則でならべられています。次の問いに答えなさい。

ア : 3, 9, 27, 81,……, 6561
イ : 9, 27, 81, 243,……, 19683
ウ : 5, 25, 125, 625,……, 390625

(1) 「イの列の和」と「アの列の和」との差を求めなさい。
(2) アの列の和を求めなさい。
(3) ウの列の和を求めなさい。

【解答・解説】

初っ端からこういった問題が来ます。初めからタフです。
お気づきの方もおられると思いますが、これは高校数学の数Bで扱う〈等比数列の和〉の公式が出来上がるまでの過程そのものです。
等差数列は小学生でも扱いますが、〈等比数列〉、しかも〈等比数列の和〉ともなれば、いくら受験と言えど小学生のレベルを超えてしまうので普通は扱いません。
これを予備知識など無い小学生に自力で完成させようという主旨の問題となっています。
僅かなヒントは設問の(1)です。この一見奇妙な問いかけだけで、少なくない高校生が教科書の段階で断念するような難度の高い思考作業を、丸腰の小学生に要求しているわけです。

(1) まず、設問の意図が今一つ不明であったとしても、答えるために差を考えてみます。つまり、数列の並びごとごっそり引き算をするわけです。
そこで、落ち着いてアとイの並びを今一度見てみると、この二つは「一つズレただけの、3をかけて進む同じ等比数列」ということに気づくはずです。
更に、アの1番目に3をかけるとイの1番目に、アの2番目に3をかけるとイの2番目に‥‥‥アの最後の数に3をかけるとイの最後の数になることまで分かります。
つまりイの列それぞれの数は、アの列の数をいちいち3倍して出来ており、そうなると「イの列の和」も「アの列の和」の3倍になっていることになります。
「イの列の和」から「アの列の和」を引くということは、「アの列の和の3倍」から「アの列の和」を引くということで、それは「アの列の和の2倍」ということになります。

良し分かった!問題が聞いているのは「アの列の和の2倍」なんだな。じゃあそれを出すためにイの列それぞれからアの列それぞれを引こう!
となりますが、細かな計算は要りません。アとイをよく見てみると、同じ数字が斜めで重なっています。(それはよく考えれば当然のことです)
イからアを引くとき、斜めに重なっている数は単純にどんどん消すことができます。すると、イの列に残るのは最後の19683だけ。アの列に残るのは最初の3だけ。となります。つまり、実際に計算するのは
19683-3=19680
だけで良いのです。
答えは19680です。

(2) (1)の答え19680は「アの列の和の2倍」でした。つまり、それを2で割れば良いので、19680÷2=9840
答えは9840です。

(3) もうお気付きと思いますが、(1)(2)で培ったテクニックをこれに使おう!ということです。
まずウの列は、5をかけて進む等比数列です。
では既に手に入れたテクニックを使うためにウの列の数をそれぞれ5倍した数列を新たに考えてみます。すると、
25, 125, 625, ‥‥‥1953125
が出来上がります。この列の和は当然「ウの列の和の5倍」なので、これから「ウの列の和」を引くと「ウの列の和の4倍」が出来上がります。
そして、この場合の引き算でも、斜めに重なった数はどんどん消え、ウの列の5倍で残るのは最後の1953125だけ。ウの列で残るのは最初の5だけ。となります。
引き算をすると
1953125-5=1953120
となります。これが「ウの列の和の4倍」です。
これを4で割れば良いので、
1953120÷4=488280
答えは488280です。

繰り返しになりますが、これは数Bで扱う〈等比数列の和〉に関する問題であり、等比数列などを散々訓練した高校生を対象にそのまま大学入試として出題できるような内容です。(特に近年の大学共通テストで好まれるような設問です)
巣鴨の第Ⅱ期の算数ではこういった性質は全問に渡り、丸暗記の解法だけではまず対処できないものであることがお分かりになると思います。しかし、当然のことながらちゃんと小学生の知識だけで解決できるようになっています。必要なのは「設問に対する洞察力」「応用力」「難問にひるまず向かっていく粘り強さ」などでしょう。

しかし、このように気の抜けない問題ばかりである一方、4~5割得点できればまず合格できるという面があります。
しかも毎年大問5つを50分。時間に追われてせわしなく問題を処理するという類ではありません。上の問題も、考え方にさえ気づけば、その後の処理自体は比較的ラクであることが分かります。
つまり解けそうな問題に焦点を当て、じっくり根気よく考えるという対峙の仕方が現実的です。途中式も要求されるので、正解ではなくても有効な考え方が認められれば部分点も期待できます。

また、出題される分野がほぼ毎年「平面・立体図形」で大問2つ分、「規則性」「数の性質」「場合の数」「割合」から大問3つ分という配分になっており、ここから自分の特性と相談して5割得点を目指すという計画が立てられます。つまり「捨て問」も比較的大胆に設定できるということです。

今回は巣鴨第Ⅱ期の入試問題に焦点を当てましたが、第Ⅰ期の問題は、性質は同じではあるものの難度はある程度下げてあります。

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